一流の建築家から「コンセプト」を学ぼう
私の仕事はWEBを活用して事業の課題を解決したり、コミュニケーションの課題を解決することであります。
プロジェクトの初期段階にあたる、お客様に何かを提案する機会に携わることはやはり緊張するものでありますし、ここ数年コンセプトが重要というのを肌にしみて感じております。
”プレゼン”という実務はスタッフにまかせるケースを増やしているので個人タスクとしてはここ数年で減ったとは思いますが、まかせたプロジェクトでも気になるのはコンセプト部分です。
同業他社さんの実績を見ていてもコンセプトはやはり気になるものです。
アプリやサイトはデザイン、技術、アイデアの総合力なので一概にコンセプトが優れているからいいものができるという訳ではありませんが、「いいね!」と思った成果物にはやはり優れたコンセプトの存在が見え隠れしております。
ちなみにJMR生活総合研究所にある商品コンセプトを引用すると
商品コンセプトとは
商品コンセプトとは、この商品はどのようなものか、誰が使うのか、メリットは何か等をひとことで言い表したものです。コンセプトは商品計画の根幹であり、出発点である、といえます。
商品開発プロセスはアイデア探索から始まりますが、商品コンセプトとはそのアイデアを発展させ、消費者の言葉で表現したものということができます。
勘がいい人には5W1Hのフレームワークで考えると良さげだとピンとくるものがあると思いますが、いざやってみるとなかなか難しいものです。
コンセプトの例でよく見かけるのは
”シンプルでユーザーにわかりやすいサイト”
的なものでしょうか。
上述したように、コンセプトはデザイン、技術、アイデアの出発点になるので成果物のすべてを享受できるような受け皿的性質、つまり抽象的にならざるを得ない部分もあり上記のコンセプトが必ずしも悪いというのではありません。
ただ、その次の言葉(=コンセプトの裏付け)が用意されていたり、「だから何?」を説明できる状態に仕上がっている必要がありますね。
このあたりは、企画の書き方やコンセプトの作り方をテーマにした書籍に必ず載っている項目だと思うので深堀りしたい人はそちらで学んでいただくとして、ようやくタイトルの記事を書こうと思います。
一流のコンセプトがどんなものか?は建築家の作品を見れば少しは理解できる
有名な建築物はコンペで選ばれております。(たぶん)
最近だと物議を醸しておりますが、2020年東京オリンピックのザハの新国立競技場が記憶に新しいです。
新国立競技場、国内外から11点が残る。最終審査は11月中旬頃。 | インテリアショップの紹介 生活の知恵 家作りのTIPSなど 家結び
建築物のコンセプトを読んでいると都市計画の流れを汲むものが多く、歴史を尊重し未来に繋げるためにふさわしい建物とは何か?というテーマを説いているように見えます。
何より携わる人の数や予算の大きさから、それを決めていくプロセスでもコンセプトは非常に重要な位置づけを占めるはずですのでそこから学べることも多いはず。
そんなこんなで、自分が気になった建築物とコンセプトを3つほど紹介します。
1.世界貿易センタービル跡地に手がけた4ワールドトレードセンターと呼ばれる高層ビル
建築家:槇文彦氏
参考URL:
世界貿易センタービル跡地に日本人建築家 槇文彦が手掛けた高層ビル完成 | マイナビニュース
コンセプト
メモリアルパークに面する敷地において静寂かつ威厳のあるミニマリスト・タワーとしての存在感を達成することと、基壇部がローワー・マンハッタン再開発の一部として、即座的に都市環境を活性化させる触媒となること
個人メモ
「〜を達成すること」「即座的〜」の2点が秀逸ですね。
”達成”からは市民が望む言葉を全面に押し出したものであり、”即座”からはあの街を速やかに回復しなければならない使命感のようなものを感じることができます。
2.ゲント市文化フォーラム 指名設計競技応募案(コンペ)
建築家:伊東豊雄氏
参考URL:
伊東豊雄 - もののもつ力「ゲント市文化フォーラム 指名設計競技応募案」:私の建築手法
コンセプト
ストリートで音楽を聞いているようなコンサートホール(梅本予測)
内容(引用)
さまざまなところから音が聞こえてきて、町の中でたくさんのコンサートが行われているかのように感じられるでしょう。人びとがケーブ内を移動しながらコンサートを楽しむことも可能な空間を計画したのです。パーティションで、音をシャットアウトすることもできますが、サウンドケーブの空間全体が連続してひとつの大きな楽器のようにもなり、ひとつの音楽を奏でるような空間でもあり得たらという提案
個人メモ
一見、コンセプトは単純ですが、内容を読むとそこからの深みが凄いですね。オファー自体はコンサートホールなので、それを”ストリートで聞いているような”を実現するためにはまだまだ多様なアイデアが必要なのは明白です。
コンペの結果は落選だったようですが、アイデアのプロセスには感銘を受けます。
3.名護市庁舎
建築家:象設計集団+アトリエ・モビル
参考URL:
コンセプト
1.新しい市庁舎のあり方を求める
2.沖縄の気候風土を捉える
3.沖縄の質感を表現する
補足(ブログの引用)
1979年、名護市の新しい市庁舎のための設計競技が行われました。
300を超える応募総数だったようで、沖縄の現代建築のみならず、当時の日本建築界において画期的な出来事であったようです。
当時、モダニズムからポストモダンへと移行していくなか、アメリカの建築批評家ケネス・フランプトンによるクリティカル・リージョナリズム(批判的地域主義)
が1981年に提唱されますが、まさしく地域と風土性とは何かと言うものが問われてきた時代でした。
個人メモ
箇条書きのコンセプトは珍しいですが、地域と都市の関係性および課題を見事に喝破したような建物です。このコンセプトの具体的な形はどんなのよ?と言われれば百聞は一見にしかずです。象設計集団が掲げる原則の中に「あいまいもこ」というキーワードがありますが、個人的にこの境界のゆらぎのような考え方に惹かれるものがあります
まだまだ紹介したいコンセプトもありますが、このコンセプトからブレイクダウンされた様々なアイデアには本当に唸らされるものがあります。テーマとその解決方法をセットで提示する大事さみたいなものを再認識しつつ、おもしろいコンセプトを掲げられるようになるためにはアイデアの深度を高めるしかないのかなとも思います。
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