色は匂えど散りぬるヲ

株式会社アジケ代表のブログ。清濁併せ呑むようなものが好物です。

デザイン態度論を実践中

こんにちは。梅本です。

最近、私が取り組んでいるプロジェクトのなかで大きな時間を占めるのが、外部組織に“デザイン組織”を導入するという仕事です。

昔から外部企業のパートナーとして“UXデザイン”に携わると必ずといっていいほど、組織の課題に直面してきました

それは物事を整理するときに「できること、できないこと」でわけたら、なぜか組織の理論で「できないこと」に分類される状況が生まれ、プロダクトとしてはどうかな?この方向性で進めてもいいのかな?という状態に陥ったことがあります。

デザイン思考、デザイン技術、デザイン態度の関係を整理

我々が行うUXデザインは大きくわけると二つのステップになります。

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前者は問題を定義するために、調査やディスカッション、ユーザーテストをして我々が解決すべき問題はこれだというのを見つけること。

後者はその問題を解決するために、サービスやプロダクトの設計をしたりUIデザイン(デザイン技術)をすることです。

基本のフレームワークはこの二つなのですが、この一連のながれをスムースに行うために必要なスキルがデザイン思考(考え方や方法論など)だと捉えています。(ちょっと乱暴ですけど)

なので、“UXデザイン”をするためには組織課題もいっしょに解決できるようなプロジェクトじゃないと、本質的な課題解決に繋がらないな。そんな仕事がしたいなとか思っていたら、そんなご相談が来たのでした。

「よしやるぞ!」

と勇んでみたものの、“デザイン思考”的な概念を社外の組織に浸透させるってすごく難しいぞ…と感じております。

端的に書けば、デザインに対する基盤、成果、マネジメント方法を定義してそれを浸透させていくことになるのでしょうが、容易なことではありません。

デザイン態度論との出逢い

このあたりを突破するために、先人の知恵がないか探していたところ「デザイン態度論」を思い出しました。

私がデザイン態度論を知ったのは2016年のことでした。 当時、デザイン関係者の間で話題になったのですが、専修大学の上平先生が書かれたデザイン態度論についての記事で知ったのです。

デザイン態度論 - Kamihira_log at 10636

この記事を拝読してから、ブログ自体をチェックするようになったのですが“デザイン”に対する考察がおもしろくて少なからずずわたしの仕事に影響をあたえるものとなりました。

デザイン態度は一度読むだけだとなかなか理解しづらいのですが、私なりの理解を許していただけるならデザインをするときの周囲のふるまいと捉えております。

先日まで公開されていた slideshare「デザイン態度論2018」に、デザイン態度とデザイン思考のスコープの図がありました。 (いまは消されているようなので、引用しません)

デザイン態度論2018 - Kamihira_log at 10636

デザイン態度論のスコープ

イメージを引用できないので、テキストで書きますが

  • Why(理念):なんのためにデザインするか?
  • What(デザイン環境/状況):何を誰がどこをデザインするのか?
  • How(デザイン方法論):どのようにデザインするか?
  • デザインの具体的な活動

をピラミッド図で表しているようなイメージを持ってください。

デザイン態度論のスコープは上記3点にあたっており、抽象度が高い部分にあたります。

(狭義の)デザイン思考のスコープは下部2点にあたっとり、デザイン方法論と具体的なデザイン活動部分に分類されています。

サイモンネックの「Whyから始めよ!」という名著がありますが、デザイン態度論はまさにそのWhyからはじまる概念図と同じところのデザインを指しているように捉えております。

WHYから始めよ!―インスパイア型リーダーはここが違う | サイモン・シネック, 栗木 さつき |本 | 通販 | Amazon

上平先生とお話しさせていただく

半年ほど前に上平先生と食事一緒にする機会がありました。

弊社の社員に上平先生のゼミ生だった人がおりまして、その方を介して一度お会いすることになりました。

その時、いろんなお話をするなかで“UXデザイン”という言葉に対する疑問やデザイン態度のほうが重要ではないか?など私が普段悩んでいることを丁寧に教えていただきました。

その流れから思い切って「うちの会社でやっているイベントに出ていただけませんか?」とお願いしたところ快諾いただけました。

デザイン態度論とともにアイデアを発想するためのワークショップを上平先生にやっていただこうと思いますので、興味がある人はぜひ参加してみてください。

組織のクリエイティビティを上げるには:インプロ体験を通して見えてくることUX dub vol.3 | Peatix

私はワークショップも楽しみですが、いま取り組んでいることを話してみてもう一度デザイン態度論についてお話し聞かせてもらいたいなと思っております。

まとめ

“デザイン”を組織にインストールしようと思うと、なぜデザイン思考やそのプロセスが必要なのか?を丁寧に説明してデザインに取り組む姿勢や立ち居振る舞いが大事です。

まわりにどう影響を与えていくかという見えない部分、いわゆる Meta Design とよばれるところがデザイン態度であり、それがないと組織に受け入れてもらえないのだろうと思います。

ということで、デザインを組織にインストールするためには、基盤や評価の整備から始めないといけないのですが、そのときの取り組みかた「デザイン態度」を意識しながらプロジェクトに取り組んでいこうと思います。

社内が“UXデザイン”を学習するチームになるために取り組んだこと

この記事はnoteにも公開しております

先日、社内で行われた UX に関する勉強会を見て、手前味噌で恐縮ですが、昔とくらべて随分レベルが上がったなと思っています。

(もちろん、まだまだ研鑽する必要はあります)

これは2年前の状態を知っているからこそ言えることであって、当時は数人のスキルを持った、かつ自律的な人たちがUXデザインを社内に啓蒙しているような状態でした。

社内勉強会の目的は1点で、属人性をなくしチームでユーザーのことを考えてデザインできるようになるためです。

私は以前から、勉強会を通して社内全体がユーザーのことを考えてデザインできる集団にしていきたいと考えていました。

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UXデザインを外部の会社ができるのか?

少し話がそれますが、“UXデザイン”を外部の会社が担うことができるのか?という疑問があります。 UXデザインはユーザーの体験を向上させることで、ビジネス課題を解決するというある種、橋渡しのような位置づけという捉え方ができます。

なので、外部の会社が本気でUXデザインできるのか?(単発の作りきりで終わる形態でできるの?)と言われれば難しい印象を受けますが、弊社はビジネスモデル、つまり契約形態を変えることでUXデザインを一緒に進めることが両社の利益に資するようなかたちにしております。

このあたりはまだ手探りですが、我々のような立ち位置の会社がユーザーとビジネスにどうやってコミットできるか?は引き続き模索していく内容だと考えています。

チームでデザインができる組織にするために

先日、読んだ「デザイン組織のつくりかた」というのは大変参考になりました。

デザイン組織のつくりかた デザイン思考を駆動させるインハウスチームの構築&運用ガイド

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優れたデザイン組織をつくるために必要なことが、基盤/成果/マネジメントの3軸にわけられていました。

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※「優れたデザイン組織の作り方」より

書籍を読むと確かにそうだと頷きつつ、これ全体に取り組むにはかなり大変です。

優先度をつけないと時間的なコストがかなりかかってしまい、途中で挫折する可能性もあるんじゃないかなと思います。

ただ、私どもが上記テーマに取り組むタイミングではこういった類の書籍がなかったので、いろんなマネジメント本や参考書籍を参考にしつつも、自分たちの業務や状況に類推させながら取り組んできました。

この記事の結論(意識していたこと)

書籍と共通する点も少しあるが、自社の場合は以下5つにフォーカスしていたと思います。

  1. 信頼に基づいたチーム文化を醸成させる
  2. 共通の言語を浸透させる。
  3. 成果物の使い方とタイミングを実感してもらう。
  4. 権限を委譲する
  5. 評価制度に組み込む

本質としては、

  • ユーザーの利用動機や行動を深く理解できるようになる。
  • その解決策をデザインできる組織になること

ことだと思いますが、最初からそこに対して高いレベルを追求することはしませんでした。

多くのスタッフやが、ユーザー体験をデザインできるようになるために何をすればいいのか悩んだかと思います。

「ユーザーを理解しよう」「インサイトを理解しよう」と声高に叫んでも全員ができるようにはならないですよね。

ユーザーを理解するためには、ユーザーの行動データをつぶさに集め、それを見る方法を収斂させるなどが必要ですが、志向性および難易度も高い業務です。 (誰もができることだとは思っていない。)

チームで大事なこと

なので、まずは信頼に基づいたチームや文化を醸成することが大事です。

「これを言っても大丈夫なんだ」とか「ここがわからなかったんだ。じゃあ私知ってるのでこのアイデアでどうでしょうか?」などのコミュニケーション量を増やすこと。

社内を観察しているとコーチングができたり、橋渡しできる人を複数人見つけました。

そうなると、私は徹底的にその人をサポートするように心がけました。

彼らのやり方が目標に近づけているのかどうかをレビューいれつつ、ともかくチーム力があがるように応援をする。

チーム形成はコミュニケーションの早さと深度でしか進められないと思っているので、ここを円滑にすることがキーだよなと。

この部分を円滑にするために、ツールの導入、自動化、キーマンとのコミュニケーションを増やしたりしました。

具体的には以下のような変化が現れました

  1. デザイナー自身で勉強すべきテーマを設定するようになった
  2. デザインプロセスが変わった
  3. お客さんとのコミュニケーション方法が変わってきた
  4. 目的と役割が明確になり、行動が変わってきた

弊社は、大きくマネージャー層、リーダー層、スタッフ層と分かれていますが、スタッフ層の仕事の質を上げると組織全体の質が上がります。

なので、このスタッフ層とリーダー層の交流を増やすことがかなりポイントだということに気づきました。

評価制度もOKRを導入

f:id:dubhunter:20180309083134j:plain そして、社内の仕組みを変えようと思うと、評価制度も同時にチューニングをしていかないといけません。

弊社はいわゆるOKRを導入しているのですが、ここで多くのチームの目標に“ユーザーのことを考えた目標”が入ってきました。

そして、マネージャーと個人が月1回すり合わせをしていくことで軌道修正や目標を修正し、ユーザーに価値が届けられているかを確認しています。

デザイナーをタイプにわけて支援(マネジメント)する。

そして、リーダーやマネージャーがマネジメントで大事なのは、相手に合わせて接し方を変えるということです。

個人のスキルについては、職能における上長や先輩など専門的なアドバイスをいつでもうけられるようにしていますが、ポイントはその時の対応方法かと思います。

私は個人のタイプを以下のように分類して、どのあたりにどういうサポートが必要なのか相手に合わせて変えるようにしています。

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この図でポイントは意志決定を誰がするのか?という点です。

意志決定は経験の有無だけではなく、基本的にストレスが伴うものです。

コーチングを学習したの人は、すべてType:CかType:Dでいきたいと思いますが、相手がまだ具体的な指示が必要な場合もあります。

目指すところは、Type:Cの人を増やすということだと思いますが、ここになるとビジョンやミッションがずれていると離職されるという課題にぶつかります。

だから、デザイン組織が目的意識を共有するという基盤が最初に築かれていないと、組織運営は大変になるのだと思います。

いずれにせよ、この文章を読んでいるかたはデザインが大事!世の中にもっとデザイナーが増やしたいと思っている方が多いと思いますので、何かの参考になれば幸いです。

まとめ

長くなりましたが、社内が“UXデザイン”を学習するチームになるために取り組んだことは以下の5点です。

  1. 信頼に基づいたチーム文化を醸成させる
  2. 共通の言語を浸透させる。
  3. 成果物の使い方とタイミングを実感してもらう。
  4. 権限を委譲する
  5. 評価制度に組み込む

デザイン組織をつくるという目的を達成するためにはマネジメントもセットで必要です。

今日はこの5つに似たことを試してみるそのときにどうすればいいかヒントになればと思って書いてみました。

もし、このあたりで困っている人がいたらぜひ教えてください。 私も悩んでいます(笑)ので、共有してもらえれば嬉しいです!

音声系のサービスを学習するため、Anchorを始めてみました

最近、音声インターフェイスが注目されてますよね。 私も自宅にGoogle Homeを購入して、「OK、Google。テレビ消して!」など恥じらいもなく話せるようにしました(笑)。

音声インターフェイスデザインについては、以前 UX MILKで書かれていた記事が参考になったのでそちらを読んでみてくださいませ。

ポイントは

  • エラー処理
  • 文法のデザイン

の2点という感じでしたが、個人的にはユーザーからのフィードバックがインターフェイスとして組み込まれていると、ユーザの満足度は上がるだろうなとか思っています。 (機械学習機能とセットだと思うので、ここは注目してます)

今日は本題ではないので、この音声インターフェイスはまた今度。

さて、最近便利だなと思った音声系のサービスが2つほどあったのでそちらを紹介しておきます。

文字起こしが便利になってきましたね。

今日のブログ記事もこの方法を使って、7割くらい仕上げました。 2年ほど前にもiPhoneのメモアプリで文字起こしを音声でしていました。

その時は文章を考えることと話す言葉の脳の使い方がどうしても異なる印象があり2ヶ月ほどで断念しましたが、上記URL の方法でもう一度チャレンジしてみようかなと思いました。

GoogleDocsと音声入力だと Google Docs が途中で録音が停まってしまうのですが、writer app だとずっと起動してくれてます。 なので、話し言葉でガーッとテキストを仕上げられるのはかなり便利ですね。

製作者の方、ありがとうございます。

AnchorというPodcastサービス

Anchor というサービスを使ってPodcast配信をしてみようかなと思いました。 Anchor - The easiest way to make a podcast

Anchor は2016年にSXSWで話題になった Podcast アプリです。 当初の狙いがInstaやTwitterなどのSNSで唯一欠けている「音声」というカテゴリを攻めるということでしたが、2018年現在でその狙いがどこまで当たっているかはわからないです。

日本だと Voicy あたりがいま攻めていると思いますが、ここに市場があるのかどうかは個人的にわからないので anchor を試してみます。

私の第一回の配信は以下。UXデザインについて話していこうかと思いますが定期的にしないと意味ないよなーとか(そうするとしんどい…笑)

今日はツール紹介っぽいブログになりましたが、たまにはこんな感じで。 f:id:dubhunter:20180301113534p:plain

2018年のご挨拶

新年あけましておめでとうございます。 昨年はみなさまから大変お世話になりました。 本年も ajike 一同どうぞよろしくお願い申し上げます。

今日は昨年の振り返りと新年の抱負をざっと書きます。

2017年は創業10年でした。

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